契約書精査
契約書は、当事者間の権利・義務を定める極めて重要な書類です。特に企業間の契約は、契約書の僅かな文言の差で、大きな権利の変動を生じさせるので、契約前に十分な精査を行うことが必要です。以下、契約に関する重要事項の具体的な例を示します。
1 契約一般
契約一般について、よく問題となる事項には、秘密保持、知的財産権の帰属、解約条件、違約金、免責条項などがあります。特に機密保持、個人情報保護、知的財産については、法令遵守の重要性が高まっています。外国企業と取引する場合は、準拠法や仲裁条項も重要な条項となります。当事務所では、英文契約書の精査も承っております。
2 売買契約
売買契約は、契約の最も基本的な形態です。よく問題となる事項としては、品質保証期間、免責条項、製造物責任、契約適合責任等があります。従来、瑕疵担保責任として定められていた売主の責任は、契約不適合責任となりました。既成の契約書は、新民法に対応していないものも多く見られます。新民法に適合した契約書の作成が必要となります。
3 請負契約
売買契約と同様ですが、建築請負については、住宅の品質の確保の促進に関する法律施行によって、10年間の品質保証が義務付けられました。建築請負契約においては、品確法に適合した適切な契約書を作成する必要があります。
4 雇用契約
雇用契約は、労働法上の規制が多い重要な契約です。雇用契約書の作成においては、法令上所定の事項の記載が義務付けられています。また、10人以上の労働者を雇用する事務所においては、雇用契約書のほかに就業規則の作成が義務付けられています。給与、昇給、勤務地、勤務時間、賞罰、雇用期間、業務内容等を正確に定めることが必要です。また、身元保証人を求める場合は、2020年民法改正によって、極度額を定めることが必須となりました。極度額のない身元保証契約は無効となってしまいます。
5 賃貸借契約
賃貸借契約は、紛争が頻発する分野の一つです。賃貸借期間、更新条項、中途解約、違約金、原状回復の範囲等について適切に定めておくことが必要です。借地人・借家人は、借地借家法によって一定の保護が定められています。借地借家法との整合性を考えながら、契約書を作成することも重要です。
6 約款
2020年民法改正によって、約款が明文の規定で認められるようになりました。約款は、当事者の署名・捺印がなくとも契約書と同様に当事者を拘束しますが、民法の規定に反する約款は、無効となってしまう可能性があります。約款作成の際は、法律の専門家である弁護士が精査することが重要です。